檻の中の2頭の豚

PRRS

豚繁殖・呼吸器症候群は、養豚における5大疾病の1つであり、世界中で豚にとって最も重大な健康リスクの1つです。PRRSはアルテリウイルスによって引き起こされます。免疫系と最大40%マクロファージを阻害し、細菌や他のウイルスの増殖や呼吸器系の損傷を引き起こすことで、他の感染症にかかりやすく、病気の臨床症状を悪化させます。

このウイルスは胎盤を通過し、妊娠70日目から胎児に感染し、妊娠後期の流産や死産または虚弱産を引き起こします。PRRSウイルスに感染した未経産豚と母豚は、胎児の罹患率と事故率が上昇し、慢性的に生産性が低下する可能性があります。

生き残った子豚は、呼吸器感染症やそれに伴う成長障害にかかりやすくなります。これらの臨床症状は、ウイルスの毒性や豚の免疫状態に応じて、豚群ごとに大きく異なります。

PRRSVはエアロゾル、空気、体液を介して伝染するため、豚群全体に容易に広がります。1

緑のお金のアイコン

経済的影響

PRRSは次のような形で大きな経済的影響を及ぼす可能性があります。
平均1日増体重の減少

平均1日増体重の減少

飼料効率の低下

飼料効率の低下

事故率の上昇

事故率の上昇

PRRSは、豚群の年間生産性を15% 低下させる可能性があります

PRRSの経済的影響は、母豚1頭あたり185ユーロ、または販売された豚1頭あたり3.73ユーロと推定されています。2


米国の国内繁殖豚および育成豚群におけるPRRSによる生産性損失の総コストは、2011年に年間6億6,400万米ドル(1日あたり180万米ドル)と推定されています。3

豚1頭あたりで計算すると、PPRSは米国で販売される豚1頭あたり4.67ドルのコストがかかります。4

欧州では、PRRSに起因する損失額は母豚1頭あたり年間255ユーロと推定されています。

  • PRRSがヨーロッパの農場の収益に与えた影響は、平均で -19.1%、一番悪い場合は -41% にもなりました。
  • 育成豚の場合、肥育での出荷までの日数が14 ~ 30日増加し、市場に出荷される豚1頭あたりのコストが7.50 ~ 15.00米ドル増加すると推定されています。
緑色の丸いアイコン

有病率

研究によると、PRRSは世界の主要なほぼすべて養豚地域で広がっていることが分かっています。


認識されているPRRSウイルス種は、PRRSV1(ヨーロッパ型)とPRRSV2(北米型)の2つです。


どちらの種も世界中に広がっていますが、PRRSV1がヨーロッパで広く見られ、PRRSV2はアメリカで最も蔓延しており、アジアでは両方の混合が見られます。日本ではPRRSV2が多く見られます。

緑の医者のアイコン

診断

診断は、臨床症状、死後検査、およびPCRによる既知のウイルスに基づいて行われます(組織サンプル、口腔液、呼吸器からのスワブ、精液など、さまざまな種類のサンプルから実行できます)。

利用できる方法はいくつかありますが、ELISAが標準的なものになります。現在、農場をモニタリングするために口腔液が使用されていますが、血清学は以前に感染した豚の診断や、ワクチン接種を受けた豚群のPRRSの診断に有効な方法ではありません。現在の分析では、最初の感染、再感染、またはワクチン接種によって生じた抗体を区別するこができないためです。また抗体価も感染を予測するものではありません。


臨床症状は株によって大きく異なります。
PRRSV 2型は臨床的に重篤になる傾向があります。


PRRSの臨床徴候、病変、および臨床歴はPRRSを示唆する可能性がありますが、診断は臨床検査法を使用して確認する必要があります。

臨床症状には以下のものがあります:
  • 結膜浮腫(目の腫れ)
  • 複合感染により子豚の生存率が低下し、呼吸器感染症が増加
  • 無気力、無力感
  • 中程度の咳、くしゃみ
  • 繁殖の問題(早期分娩、発情回帰日数の増加、無発情期の長期化、発情再開の遅れ、死産率の増加、胎児の罹患率など)
  • 母豚の発熱、食欲不振、後期流産
  • 全体的な事故率の増加

1. Pileri E and Mateu E. Review on the transmission porcine reproductive and respiratory syndrome virus between pigs and farms and impact on vaccination. Vet Res. 2016;47: 108.
2. Normand V. et al., Economic impact of PRRSV stabilization following intradermal mass-vaccination (Porcilis® PRRS) and strict biosecurity measures. IPVS 2014.
3. Holtkamp D. et al., Assessment of the economic impact of porcine reproductive and respiratory syndrome virus on United States pork producers. Journal of Swine Health and Production, 2013.
4. Haden C. et al., 2012 AASV Annual Meeting, 75-7.