
サーコウイルスとマイコプラズマ
(PCV2 と M. hyo)
豚サーコウイルス2型 (PCV2) とマイコプラズマ・ハイオニューモニエ (M. hyo) は、養豚の生産成績に大きな影響を与える要因の一つです。
M. hyo感染は乾性の咳を伴う流行性肺炎 (EP) と呼ばれる慢性の呼吸器疾患を引き起こします。この疾患は罹患率が高いものの死亡率は低く、一日平均増体重や飼料要求率に大きな影響を及ぼします。この病原体はインフルエンザやPRRS、PCV2などの他の感染症を重篤化させます。
PCV2は豚サーコウイルス関連疾病を引き起こします。臨床的には離乳期から肥育期にかけて高い死亡率をもたらす疾患として現れます。このウイルスは世界中で幅広くみられ、ウイルス粒子は非常に小さく、環境に対して高い耐久性を持ちます。
サーコウイルスとマイコプラズマは合わさることでより重篤に
PCV2とM. hyoの同時感染は重篤な呼吸器疾患および病変を引き起こします。

経済的な影響
豚サーコウイルス関連疾病は生産性に甚大な影響を及ぼし、死亡率は4~20% に達することもあります。
ワクチン投与が行われるようになる前は、EUにおけるPCV2による損失は年間5億6,200万~9億ユーロと推定されていました。
EPおよびPCVDに関連する経済的な損失

死亡率および淘汰率の増加

生産性指標 (一日平均増体重、飼料要求率) の全体的な悪化による成長率の低下

病豚の管理費や治療費の増加

二次感染によるコストの増加
米国における流行性肺炎の経済的な影響は、毎年3億7,500万ドル~4億ドルと推定されています。
流行性肺炎に感染した豚は出荷日齢が長引くため、結果的に母豚1頭あたりの年間出荷頭数が減少します。M. hyo陽性となると、生産費が一頭当たり約2.5ドル増加し、薬剤費が最大0.90ドル増加することがあります。

有病率
PCV2とM. hyopneumoniaeは広く遍在すると考えられているため、世界中のどの豚群にも存在する可能性があります。
多くのヨーロッパ諸国では、と畜場で流行性肺炎様の肺病変保有率が24 ~ 70% と報告されています
PCR検査により、肥育豚群におけるM. hyoの平均有病率は66% と推定されています
豚サーコウイルス感染症の罹患率は50 ~ 60% にも達します

診断
豚サーコウイルス関連疾病および流行性肺炎の臨床症状は特異的ではないため、診断のためには、複数豚の剖検(と畜場での肺病変の評価を含む)を行う必要があります。
診断の要因
- 一般的な臨床症状を示し削痩している豚の存在
- この疾患の特徴的な肉眼的および病理的所見の存在
- 病理検査におけるPCV2抗原または遺伝子の存在 *
- リンパ球の減少
*PCV2の感染は健康豚でも一般的にみられるため、PCRによる血清または組織中のPCV2の検出、またはELISAによる血清中のPCV2抗体の検出だけでは、サーコウイルス関連疾病の確定診断をするには不十分です。
サーコウイルス関連疾病は、消化器疾患、皮膚疾患、腎症症候群 (PDNS)および繁殖障害を示すこともあります。最も重要な病変は腎臓に見られ、腎臓が腫脹し、表面に出血点が見られます。
M. hyoは、臨床症状と剖検に基づいて診断できますが、病変の組織学的検査と組み合わせて診断することもあります。ただし、確定診断にはELISA、血清学的検査、肺染色標本の顕微鏡検査、免疫蛍光検査、PCR、およびマイコプラズマ・ハイオニューモニエの培養と同定のうち1つ以上の検査が必要となる事があります。