
APP –
アクチノバシラス・
プルロニューモニエ
アクチノバシラス・プルロニューモニエ(APP)は、世界中で見られる最も重要な豚の細菌性呼吸器感染症の病原体の一つです。この細菌は豚の胸膜肺炎の原因菌であり、非常に伝染性の高い呼吸器疾患です。
APPには少なくとも18種類の異なる血清型があり、一部の血清型では臨床症状を引き起こさない一方、他の血清型は重篤な病気を引き起こす可能性があります。罹患率やメインとなる血清型は国によって異なります。血清型1,2,5,9および11型は高い病原性を持つことが多いです(2型および9型はヨーロッパの国々で非常に高い病原性を示します)。一方、3型および7型は比較的軽度です。
病原性が低い血清型への感染であっても、他のウイルスや細菌の病原体と共に豚の呼吸器疾患複合体(PRDC)の一部として、死亡率の増加に影響を及ぼすことがあります。
APPは臨床症状を示すことなく扁桃や上部気道に存在し続けるため、そのような豚を導入することで豚群にAPPを侵入させてしまいます。APPは空気中のエアロゾルを介して短距離で伝播し、環境中では数日しか生存しません。
急性のAPPが発生した後に慢性の症例が現れることもありますが、この疾患は突然の発症、甚急性または急性の臨床経過、高い罹患率と死亡率を特徴とすることが多いです。
豚胸膜肺炎の臨床症状
急性型:
急性型では、感染した豚は高熱や、重度の呼吸困難と座り込んでのあえぎ、口と鼻から気泡上の血液が見られるなどの臨床症状があらわれ、急死することもあります。

慢性型:
慢性型は臨床症状を示さないこともあり、感染に気付かずにそのまま出荷に至るケースが見られます。肺や胸膜の癒着により、呼吸に余分なエネルギーが生じます。そのため、一日平均増体重や飼料要求率が悪化するなど生産性に影響を及ぼし、長期的な経済的損失につながります。

APPによる経済的損失
APPに感染した豚では、一日平均増体重と飼料要求率は悪化する一方、死亡率や薬剤に関連する費用は増加します。
APP感染の重症度にもよりますが、その損失はバイオセキュリティーが低い農場では豚1頭あたり最大27ドル (約4,000円) に達するとも推定されています。1
経済的な影響は豚の死亡率だけでなく、治療費にも及びます。一日平均増体重は最大34%も減少し、飼料要求率は26%悪化する可能性があります。2

1 Stygar A.H. et al, Economic value of vaccination against Actinobacillus pleuropneumoniae in a fattening pig herd. Conference NJF seminar 476. Economics of Animal Health and Welfare. 2014.
2 Straw B., 1989.

有病率
APPは養豚を行っている主要な国に広く分布しています。多くのヨーロッパ諸国で大きな問題となっており、米国、カナダ、アジアでも比較的よく見られます。
ナイーブな豚群では、APPはすべての月齢ステージで発生しますが、通常は6週齢から20週齢の豚に見られます。
アクチノバシラス・スイス感染症は類似した病気と病変を引き起こすことがありますが、アクチノバシラス・プルロニューモニエほど感染力が高くありません。
アメリカでは、80%の農場 がAPPに感染しているものの、症状が見られるのは20% だけと言われています。
スペインでの調査によると、調査対象の豚群のほぼ90% がAPPの抗体を保有していました。
カナダの研究によると、子豚の上部気道でのPCR検出を行ったところ、豚群の78% がApp陽性でした。

診断
APPの診断は今までの感染歴、臨床症状、剖検(と畜場での肺病変検査を含む)および細菌の培養に基づき行われます。肺病変は非常に特徴的で、と畜時の肺のモニタリングは慢性型APPの診断に役立ちます。
ただし、APPの確定診断は細菌培養、同定そしてAPPの血清型判定によって行います。抗体検査は血清型を特定するために使用されることもありますが、血清型間の交差反応があるため判断が困難な場合があります。
APPは、アクチノバシラス・スイス感染症、流行性肺炎、PRRS、インフルエンザ、およびサルモネラ・コレラスイスによる肺炎との鑑別が必要です。
臨床症状は、甚急性・急性または慢性感染によって異なります。
甚急性または急性型:
- 重度の呼吸困難と、座り込んでのあえぎ
- 咳
- 口と鼻から気泡上の血液が見られる
- 高熱
- 食欲不振、元気消失、動こうとしない
- チアノーゼ(耳、鼻、脚、および腹部が青くなる)
- 急死
慢性型:
- 突発的または断続的な咳
- 死亡率のわずかな上昇
- 屠殺時に胸膜炎になっている肺の増加
- 急激ではないものの、長期の経済的な損失
血清学:
ELISAは感染の可能性がある豚群の日常的なモニタリングに使用できます。様々な種類のELISAテストがあるので、臨床症状を示していな場合には、血清型間の交差反応およびApp株間の病原性の違いなどを考慮し、結果を慎重に解釈する必要があります。
APPの定期的な診断に利用できる検査
- ELISA
- PCR
- 細菌培養